私は人事コンサルタントとして人事担当者の方とお話をさせて頂く機会が多いが、人事の方と話をするときに共通して言われることであり、気になることがある。
それは、人事担当者の方の傾向であるが、人事制度の細かいテクニックや他社もしくは最新の事例に興味を持っている方が多い。
一方で、「なぜ制度を見直すのか」という問いに対しては、言葉が詰まるか、「上席に確認しないと分からない」など言われることも同じように多い。
仮説であるが、彼/彼女らに共通することは、「制度を変えること」が目的となってしまっており、「本来の目的」を忘れていることではないだろうか。
もちろん、テクニックや他社・最新の事例も大切であるが、外部の事例を自社に導入したとしても、必ずしも自社にマッチするとは限らない。
また、細かいテクニックにこだわりすぎると枝葉論に陥ってしまう恐れもあるし、運用の複雑化を招く一因にもなりうる。その中で、本来の目的を見失った中で人事制度を改定することは健全であると言い難い。
ここで言う「本来の目的」とは、「組織活性化」「従業員モチベーション向上」など、他社でも同じように当てはまる内容ではない。
会社として「何で勝負していくのか」「自社が業界で生き残るには何が必要なのか」という各社固有のキーワードが「本来の目的」であると考えている。
また、各社固有のキーワードは社外に転がっているのではなく、自社で考え捻りださなければ見つからないものであると考えている。
「何で勝負していくのか」、「何で生き残るか」を決めなければ、どのような布陣・兵科で戦い、どんな手柄を高く評価するのかが決められない。
また、自社は何が弱いのか、何が不足しているのかも明確になり、改善策も定義しやすいはずである。
小規模の企業であれば、今日乗り切ることで精一杯という事情も分かるが、むしろ、限られた経営資源で戦う小規模の企業の方が「的を絞る」というインパクトは大きいはずである。
人事制度を考える際には、最新の事例や細かいテクニックに目線が行きがちであるが、「本来の目的」も忘れないでいただきたいと切に願う。
どうなる・どうするこれからの退職金制度
第1回「いよいよ中小企業の適格年金改定も本格化へ」
退職金・年金制度は、資産運用環境の悪化や退職給付会計の導入といった環境変化、退職金制度自体運営困難な会社が増えたため、2000年頃から多くの企業で見直しが進んでいます。具体的には、まず大企業を中心に、新型の確定給付企業年金や確定拠出年金(日本版401k)への切り替えなど、さまざまな制度改定の動きが活発化しました。続いて現在は、2012年3月の税制適格退職年金(適格年金)の廃止に対応するための検討が、が行われています。2008年には200人未満の中小企業でもいよいよ本格的に退職金制度改革が進もうとしています。
本連載では、この適格年金の改定を軸に、実務上どのように退職金・年金制度の改定を進めていったらよいか、またその際、人事・財務戦略上どのようなことに留意したらよいかなどについて、多くの制度改定を手がけてきた三橋先生が分かりやすく説明していきます。
今回は、企業年金と退職金を取り巻く環境や、現在の企業における検討の状況をみていきましょう。
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大きく変化した退職金・年金を取り巻く環境
退職金・年金を取り巻く環境は2000年以降大きく変化しました。その変化は図表1のように表すことができます。
図表1 退職金・年金を取り巻く環境の変化
制度面では、新しいタイプの企業年金が創設され、年金制度の多様化が進みました。具体的には、2001年10月に、企業が決まった掛け金を拠出して従業員が自己責任で運用し、その実績によって年金額が変動する確定拠出年金(日本版401k)が導入されました。2002年4月には、厚生年金の代行部分を持たない確定給付企業年金が導入され、厚生年金基金の代行返上が可能になりました。また、これに併せて、これまで中小企業の退職給付制度の柱となってきた適格年金が、2012年3月末をもって廃止されることになりました。
国の公的年金の制度改正も企業に大きな影響を及ぼします。厚生年金保険料の引き上げのスケジュールが決まり、パートタイマーの厚生年金保険への加入も現在議論されています。
経理面では、2000年度に退職給付会計が導入され、退職金・年金の債務が貸借対照表に計上(オンバランス化)されるようになりました。最近では、中小企業や病院にも、この退職給付会計が広がってきています。加えて、2002年に税制上、損金算入できた退職給与引当金が廃止されたことから、年金制度がなく退職一時金制度のみの企業が、費用の損金算入と平準化を図ることができる年金制度の導入を検討する事例も増えてきました。
雇用環境も大きく変化しています。人事面では、雇用の流動化に対応して、中途採用者に不利にならない直線的な給付カーブの退職金制度への改定がよく行われています。また、勤続年数とともに増加する退職金から、評価をより反映させた退職金・年金制度への改定も盛んになってきました。
適年移行先は中退共か
ここで、適格年金の検討の状況について詳しく見ておきたいと思います。
適格年金は、これまで年金資産の積立水準が低く移行を検討することが難しいケースや、親会社などの動向を見極めるため、移行の検討を先延ばししているケースが目立ちました。しかしながら、景気が少し回復したことや、大企業の制度改定が一段落したことから、中小企業の移行先の検討がいよいよ本格化してきました。
適格年金の契約件数は、2007年9月末で30,000件程度あります。その内訳は、図表1のとおりです。300人未満の企業が9割を占めています。適格年金は2012年3月で廃止されるため、およそ5年間でこれら30,000件の制度の検討が行われることとなります。
適格年金の移行先としては、主として確定給付企業年金、確定拠出年金、中小企業退職金共済の3つが挙げられます。但し中小企業では比較的、単純シンプルに運用できる中退共がもっとも適していると思われます。確定給付年金だと絶対的条件の多さ並びに手数料の高さから企業にとって制約が多くなること、確定拠出年金だと60歳まで給付金をもらうことができないことを考えると明確な答えが出てくると重います。但し、これらは退職金の積立手段の一つにしか過ぎません。退職金制度改定で一番重要なことは企業の人事戦略上どのように退職金制度を導入していくかということです。また、制度改定の予定時期は、まだ決まっていない企業が多いといえそうです。
図表2 適格年金の予定廃止時期
次回からは、適格年金について、移行先制度の全体像、制度改定の流れ、移行方法などについて説明していきたいと思います。
三橋由寛(みつはしよしひろ)さんプロフィール
1973 年 千葉県船橋市出身
1998 年 法政大学卒業
1998 年 株式会社サイゼリヤ入社 新人社員研修、アルバイト研修等の業務に携わる
2002 年 GEエジソン生命(現AIGエジソン生命)に転職
個人市場を中心に保険のコンサルティング業務に携わる
2003 年 社会保険労務士試験合格
2005 年 ミツハシ社会保険労務士事務所を開業
主な保有資格
社会保険労務士(千葉県社会保険労務士会 会員 NO.12050041 )
生命保険協会認定FP
年金アドバイサー
会社情報
| ミツハシ社会保険労務士事務所 | |
| 所在地 | 〒270-1471 千葉県船橋市小室町 2595 |
| TEL | 047-457-5379 |
| FAX | 047-457-5379 |
| URL | http://www.3284.biz/ |
| 業務内容 | ・賃金、人事労務コンサルティング ・退職金制度の改革 ・就業規則の変更、作成 ・助成金の代行申請 ・社会保険労務士業務など |
社労士として開業を成功させるために
津田詔一
士資格は独立開業してこそ、士業の醍醐味が味わえるものです。社労士の資格で食べていけますかという質問を受けることも度々ありますが、答えはだせません。資格は単なる手段、ステップにしかすぎません。社労士の資格をもっているから依頼がくるわけではなく、その人を信頼して仕事を依頼してくるのです。信頼され、魅力ある人間になることが、まずは先決です。社労士資格をとり、社労士として開業を目指す人は、知識は十分にあるものと思います。しかし、それは社労士なら誰でも同様の知識を持っているといえます。そこには差別化されたものがありません。他の社労士と比べて、何が優っているのか、何が違うのか、なぜこの社労士を選ぶのか、これらへの回答は自分自身で用意しなければなりません。以下に、私が自分自身を売るために心がけたことを書いてみます。
開業するとあたりまえのことですが、当初は何から何まで自分でやらなければなりません。3級程度でかまいませんが簿記の知識が必須です。これは、事業主から財務諸表を見せられたときにも役にたちます。PCスキルも必要でしょう。営業の力もないと困ります。これらが揃ってのことを前提として以下の項目を読んでください。
1.自分の専門分野は何か
この何か探すために、ますはご自分のキャリアの洗い出しをすることをお勧めします。自分の経験、社労士受験科目以外の知識にどのようなものがあるか明らかにすることから始められたら良いと思います。私は、自分自身のSWOT分析をしました。何を得意とし、何を苦手・弱みとし、どの分野で活躍できるのかを明らかにし、その方面に全力を傾注してアプローチをしました。もちろん他の分野をないがしろにしろという意味ではありません。しかし、主となる分野に力を集中していくことで、その分野での経験を更に積み重ねることで、その分野の専門性を高めることができてきます。
2.顧客は事務手続屋を求めているのではない
開業社労士に顧客が求めるものは、適切なアドバイスです。人事労務上の問題が発生したとき、顧客は顧問社労士へ相談をしてきます。法律上はこうであると答えることは社労士であればできることでしょう。それでは、顧客は満足できないのです。いまや法律の問題であればネットで調べれば答えは出てくる時代です。顧客から求められているのは、解決のためのアドバイスです。そのアドバイスは、法的にも白であり、かつ顧客にとって有益な回答である必要があります。そのためには、過去の判例や行政通達を学ぶことが大切です。それを判例や通達を丸暗記しろということではなく、そこから応用をすることです。判例で大切なのは、判決理由です。どのような法理で判決を導き出したかです。よく知られる「整理解雇の4要件」も判決理由の中で論ぜられているものです。ここから、現実に直面した問題解決の糸口を導き出すことができます。
3.モノの見方
モノの見方を訓練してください。事象は単純ではありません。あらゆる角度から観察し、あらゆる可能性を検討しなければなりません。スキルアップ研究会のメンバーの多くは、MIXIにも参加していますので、法律系、労基法系のコミュを覗いてみてください。労働法に関係しているトピックも多くでています。トピは素人が書いたものですので、必要とされる情報は極めて乏しいし、読み難いものです。これで明確な回答なんてできるわけはありません。しかし、ここに何の情報があれば、回答が絞れるのかを検討してみてください。また回答は、できるだけたくさん用意してみてください。選択肢は多くなればなるほどいいのです。こんなことはありえないという前提を捨てて、わずかな可能性があれば、それを生かして選択肢を作ってください。これらは、知識ではなく知恵と呼ばれる範疇に入ります。この知恵こそが、顧客に売る商品となります。
津田詔一さんプロフィール
1950年 東京都品川区生まれ
1973年 明治学院大学社会学部卒業
1973年〜2004年 外資系企業3社において営業企画、消費者部門、人事総務部門を経験
2005年 東京都品川区で独立開業
主な実績
会社設立、契約書作成及び法務事項調査(リーガルチェック)、就業規則その他規程作成、助成金支給申請、労働保険・社会保険事務手続き等
主な保有資格
行政書士(入管申請取次者)
社会保険労務士(特定社会保険労務士)
消費生活アドバイザー
ファイナンシャルプランナー(AFP)
会社情報
| 津田経営法務研究所 | |
| 所在地 | 東京都品川区東五反田1-10-7-412 |
| TEL | 03-5793-4790 |
| FAX | 03-5793-4798 |
| URL | http://www.srg-tsuda.biz/ |
| 業務内容 | ・会社設立 ・NPO法人、その他の法人設立 ・各種営業許認可 ・契約書・内容証明書 ・就業規則・その他規程類整備 ・労働保険・社会保険手続 ・国際業務 ・消費者問題 ・成年後見人 ・遺言・遺産 |
勤務社労士が活躍するためのファーストステップ
今井 洋一
スキルアップ研究会のホームページには、月1回のペースでメンバーによるコラムを載せていく予定です。初回は私、今井が勤務社労士が活躍するために必要なことについて書かせて頂きます。
昨今各社とも人事改革に精力的に取り組んでいます。その流れのなかで、1号業務・2号業務だけではなく、コンサルティング(3号業務)能力を有している勤務社労士の活躍の場はますます広がっていると思われます。
しかし、勤務社労士が人事コンサルタントとして活躍するためには、クリアしなくてはならない壁もあります。
そのために必要なことを、3つにまとめてみました。
(1)社内における認知度を高める
まず、勤務社労士に対する社内の認知度を高める必要があります。社労士という資格がどういうものか、社労士の資格を持った人間は何ができるのかを、周りの人にきちんと理解してもらい、認めてもらえれば、コンサルタントとしてのアドバイスも受け入れられる可能性が高まります。
ただ、認知度というのは、ある日突然上がるものでもありませんから、地道に広く存在をアピールしていくことが必須です。
第一歩として、教育部門と協力し、社内研修・社内教育を企画するのもいいでしょう。社労士の知識を絡めた人材管理に関する教育(例:労基法を踏まえた管理職研修等)を行うことで、社労士の知識を広められるだけではなく、自身の存在もアピールできるようになります。
また、外部の研修などで仕入れた情報やノウハウを社内に還元することもによっても、認知を促進することができるはずです。
(2)社外にアンテナを張る
スキルアップ研究会や、大手のコンサルティング会社等、定期的にセミナーを開催している外部機関を利用し、自身のスキルを高め、知識を増やすことも大切です。
セミナーや勉強会に参加すると、知識を得られるだけではなく、自社内の価値観や暗黙の了解を超えた示唆を得ることが可能になり、視野が広がるはずです。
また、セミナーなどに参加することにより、他社の人事部門の方や、コンサルタントなど、社外に人脈が広がり、新しいネットワークを築くこともできます。そのようなネットワークが、知識以上に価値あるものになることも考えられます。
(3)自身のコンサルティングスキルを高める
コンサルティングには知識だけではなく技能も求められます。技能は書籍だけでは身につきませんから、ロールプレイや技能獲得に主眼を置いた研修を受講することが役に立ちます。
その他、「コンサルティング型営業」などを実践・意識している営業部門の方と意見の交換をしたり、その仕事スタイルを自分の仕事に当てはめてみることも有効です。
以上3点が、私からの提言です。
皆様の知識と技能の向上に、スキルアップ研究会の存在がお役に立てれば良いと思っております。


